大空間のなかで皆が流動的に
互いのデスクを行き来し,情報共有していた。スタッフとインターンの垣根は完全に無くなっていた。
BIGではそこで働くすべての人間を敬愛と信頼をこめてBIGSTER(ビッグスター)と呼んでいる。過去BIGで働いていた元日本人BIGSTER達にその経験と将来のBIGSTER達へのアドバイスを語ってもらう。

平山貴大
隈研吾建築都市設計事務所勤務
- BIGで働くことになったきっかけとその動機は?
在籍していた隈研究室では、ほぼ全員が海外インターンもしくは留学していた。自分は早く実務にかかわりたくてインターンを選択した。
もともと自分の設計で形に理由を求めることが多く、またいかに限られたプレゼンの時間の中で審査員に伝えるかを考え、キャッチーなパースとダイアグラムを用いて実現しようとしていた。世の中にはダイアグラムのためのダイアグラム(説得力のない形遊び)が溢れていたので、ダイアグラムの本家ともいうべきBIGに応募することにした。
- 採用が決まってからのプロセスはどのようなものでしたか?
応募から採用がとても早く、BIGの採用ページから応募した次の日に採用の通知がきた。しかし、そこから実際にビザが降りるまで5ヶ月かかった。インターンした2015年はBIGが巨大化している途中で、人事が大量のインターンの出入りに対応しきれていなかったのだろう。
採用通知がきてからは、インターンに必要な情報を人事に渡し、オンラインでビザ取得のためのフォームを埋めていった。最終的には大使館でビザ申請して、2ヶ月ほど経ってビザが降りた。
- 実際働き始めてのBIGのオフィスの雰囲気や印象は?
第一印象は、「東大の製図室と同じだな」だった。大空間のなかで皆が流動的に生活し、お互いが進めている設計が常にわかる状況だった。事あるごとにお互いのデスクを行き来して情報共有していた。
しかし、製図室では学年ごとの隔たりは多少残っていた。BIGのオフィスはさらにその先を進んでいて、ランチタイムや定期的なフライデーパーティー、レクチャーなどではスタッフとインターンの垣根が完全に無くなっていた。正直、誰がインターンで誰がスタッフなのか最後まで把握しきれなかった。
今働いている隈事務所はカジュアルな雰囲気ではあるが、社員食堂の有無はとても大きく、やはり日常的に話す相手は限られてしまう。
- 現地での生活はどのような感じだったでしょうか?
デンマークは噂通りアパート探しが困難を極める。最初の1ヶ月はairb&bで一部屋間借りした。家探しには恵まれなかったが、たまたまBIGで働いていたスタッフが長期休暇を取るとのことで部屋を貸してもらった(5500DKK)。その後、fbを通じて別の場所で一部屋間借りすることができた(5000DKK)。インターンの身では自分のアパートを見つけることができず、シェアハウスもしくは一部屋間借りする形になるだろう。
生活必需品は身体を洗うブラシ。日本で使っていた、使い勝手の良いものを2本持っていった。これが無いと洗った気がしない。当時は料理もあまり得意ではなかったので、食事は基本的にスーパーですぐ食べれるものを買っていた。BIGで出てくる朝昼晩の無料のご飯を食べるだけで1日が終わる事もあったのでありがたかった。日本にいる時よりも生野菜を見かける頻度が高く、むしろ健康的な生活が出来ていた。外食はやはり高いので、食べに行ける回数は限られるだろう。コペンハーゲンで若者が集まるペーパーアイランドが今一新されようとしているので、今後が楽しみである。
逆に、デンマークからヨーロッパ各地へは安く行けるので出来るだけ旅行を組み込むことをおすすめする。自分はドイツとフランスにしか行かず、機会を逃したことを後悔している。BIGのLego houseには是非とも行きたかったが、開館前にインターンが終わってしまった。
- 担当したプロジェクトやチームの構成、雰囲気は?
自分はたまたま幅広いプロジェクトを担当することができた。集合住宅、オフィスのコンペ、台湾のコンテナを連ねたホテル等々。チームはスタッフ1人とインターン数人でできていて、コンペに至っては手を動かすのはインターンのみという場合もあった。驚くべきはレンダリングチームや模型チームがいないことだった。コンペの外注パースを除き多くのパースがスタッフやインターンの手で作られており、そのクオリティは相互の教え合いによって保たれている。設計者がレンダリングも行うことで設計の意図の反映が容易になり、直前の修正が可能だった。

インターン終了時にもらったTシャツのデザイン。各自オリジナルのものがプレゼントされる。
- どのようなことに日本で働くことと違いを感じたか?
デンマーク内実施設計部隊とデザインアーキテクト?部隊が分かれていること。コンペやコンセプト、デンマーク外での設計には基本的にデザインアーキテクトが担当して、デンマーク国内で建てる場合に実施設計部隊が投入されていた。インターンの募集も分かれており、求められるスキルも異なっていた。
- 学んだこと、刺激になったこと、BIGのすごさなどは?
インターンを通じて、もちろんBIGの核心の一部は掴めた(と思う)。パビリオンから都市スケールまでを自由に行き来しながら、常に新しさを求めている。
ビャルケのチェックに向けて毎回完成度の高いpdfを作成し、ビャルケがどんどん方向性を決めて行く。このプロセスに使われるpdfの完成度が、最終的な建築の完成度に大きく影響している。
BIGには採用されなかった、もしくはコンペで負けた案のダイアグラムのストックがあり、色んな敷地で実現可能性を狙っている。このストック(事務所内での相互レファレンス)を敷地にまず当てはめてみることで、スタッフは容易に敷地の性質を理解できているように思えた。
- 苦労したことは?
英語での日常会話に1番苦労した。設計の話をしている時は(英語ネイティブ以外は)使う単語も限られてくること、スケッチなどを伴う会話にであることから容易に打ち合わせできたが、ひとたび日常会話となると聞き取るのが難しかったり笑いのポイントが異なっていたりして溝を感じることが多々あった。バーでの会話が1番難易度が高い。
- 思い出深いことなどは?
インターン終了直前に開催された、事務所主催のパーティーが思い出深い。毎年夏と冬に開催していて、テーマに沿ったコスプレのグランプリを決めたり、ビャルケやフィンを含んだ皆で踊ったりしていた。世代が上のスタッフ、アソシエイツもがインターンと一緒に踊るような光景は日本企業にはあまり見られないであろう。(そのような方達は長年踊っているので、動きが面白い事が多い)
また、定期的に事務所へ美容師が出張してきて割安で髪を切ってくれるのはなかなか珍しいだろう。デンマークっぽくしてと頼んだところ、アソシエイツの1人と同じ髪型になったことがある。
- BIGで今後働きたいと思っている人へアドバイスは?
自分の設計の操作がきちんと空間のクオリティに寄与していて、かつ敷地外への繋がりをより良くしているか見なおして下さい。各プロジェクトにアイコンをつけられる=端的に設計意図を伝えられるような設計をすることも、大事です。
外国人が集まるバーに行って英語で会話できたら、英語力は十分です!必ず楽しく過ごせます。

平山貴大
東京大学、東京大学院卒業。2015年に修士を1年休学して、8ヶ月間BIGコペンハーゲンでインターンを経験。現在は東京で隈研吾建築都市設計事務所勤務。BIGでの経験を活かし、主に海外案件を担当する。


